血液中には、コレステロール・中性脂肪(トリグリセリド)・リン脂質・遊離脂肪酸の4つの脂質があります。コレステロールとリン脂質は、細胞膜やホルモンの材料となり、中性脂肪や遊離脂肪酸は活動エネルギーとなることでそれぞれ体内での重要な役割を果たしています。
しかし、これらの脂質が血液中に増えすぎると「脂質異常症」となります。
血液中のコレステロールには、各細胞にコレステロールを運んでいるLDLと各細胞で余ったコレステロールを回収して肝臓に戻すHDLがあります。
どちらも重要な働きをしているのですが、LDLは、血管の内側に付着しやすいため悪玉コレステロールと呼ばれ、HDLは、余分な血液中のコレステロールを減少させるため善玉コレステロールと呼ばれています。
脂質異常症は、自覚症状がほとんどないことが特徴です。そのため、HDLが減少しLDLが増加すると、コレステロールが血管の内側に付着し、血液の流れを妨げる動脈硬化が起こります。更に進行すると、心筋梗塞や脳卒中を引き起すこともあるため注意が必要です。
脂質異常症は、血液検査で異常値を示す脂質の種類によって大きく以下の3つに分類されます。
※出展:日本動脈硬化学会 動脈硬化症疾患予防ガイドライン2022年版
脂質異常症の原因は、大きく①生活習慣の乱れや遺伝など(原発性)と②病気や薬剤によるもの(続発性)の2つに分類されます。
食べすぎや飲みすぎによる過剰なエネルギー摂取、運動不足による肥満、喫煙などの生活習慣の乱れにより発症します。
過剰なエネルギー摂取や肉・バターなどの動物性脂肪の摂りすぎは、コレステロールや中性脂肪を増やす原因になります。
また、甘いもの(糖質)やお酒の飲みすぎなども中性脂肪の合成を促進させるので、注意が必要です。
脂質異常症では、血液中のコレステロールや中性脂肪の量が大きな問題です。
そもそもこれらが体内でどのような働きを持っているのかをおさえましょう!
脂質異常症には、脂質の代謝能力に遺伝的に欠損があるため起こるものがあります。
いくつか種類がありますが、代表的なものに「家族性高コレステロール血症」があります。原因としては、血液中のLDLコレステロールを細胞内に取り込む働きをするLDL受容体が生まれつき少ないことによるものといわれています。
一般人口の300人に1人程度がこのタイプであることが分かっています。
女性ホルモンのエストロゲンには、血液中の悪玉コレステロールの生成を抑制する、余分な悪玉コレステロールを肝臓に回収することを促す作用があります。加えて、エストロゲンには、善玉コレステロールを増やす働きもあるため、血中のコレステロールの量を調整するはたらきに大きく関わっています。
しかし、閉経によってエストロゲンが急激に減少すると、血液中のLDLコレステロールが増加し、HDLコレステロールが減少することにより脂質異常症のリスクが高まるとされています。
甲状腺の病気や糖尿病や肝臓病、腎臓病などを患っている場合、コレステロール値や中性脂肪値を上昇させ、脂質異常症を招きます。
この場合、原因となっている病気を治療することで改善されます。
また、降圧剤やホルモン剤、免疫抑制剤、角化症治療薬、向精神薬などの薬で脂質異常症を引き起こすことがあります。
脂質異常症の種類によって予防法が変わりますので、タイプを把握しておく必要があります。
●コレステロールや飽和脂肪酸を多く含む食品(肉の脂身、バター、乳製品、魚卵など)の摂取を控える。
●トランス脂肪酸(マーガリン、マヨネーズ、ケーキ、スナック菓子など)の摂取を控える。
●食物繊維が多い食品の摂取を増やす。
●糖質(菓子類、清涼飲料水、穀類など)が多い食品の摂取を控える。
●植物油(サラダ油、ごま油、コーン油など)の摂取を控える。
●糖質が多い食品の摂取を控える。
●アルコールを控える。
食べすぎや飲みすぎはもちろん、気を付けておきたい食事対策をまとめました。
基本は、摂取エネルギーが消費エネルギーを超えないように努めて、コレステロールや飽和脂肪酸の多く含む食べ物を控えることです。
食べ過ぎた過剰のエネルギーは中性脂肪として蓄えられ、肥満をもたらします。
特に脂質や糖質が多いお菓子やアルコール飲料は控え、腹八分目を目指しましょう。
食物繊維は、体外へコレステロールを排出させる働きがあります。
特に海藻やきのこなどに多く含まれる水溶性食物繊維は、LDLコレステロールの増加を抑制し、動脈硬化を予防する効果があるので、積極的に摂取しましょう!
また、食物繊維は硬くてよく噛まなければいけないものが多く、満腹感を得やすいため、食べすぎ防止にもなります。
肉類やバターなどに含まれる飽和脂肪酸は取り過ぎると悪玉コレステロールを増やします。
一方で、魚には良質なたんぱく質であるn-3系不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が含まれています。これらは、LDLコレステロールや中性脂肪を減らし、血栓の形成を抑制させます。特に、サンマやサバ、イワシなどの青魚には多く含まれるため、積極的に摂取しましょう!
血液中のコレステロールは「肝臓から作られるもの」と「食事からとり小腸で吸収されるもの」があります。
レバーなどの肉の内臓やイクラなどの魚卵はコレステロールを多く含む食べ物なので、控えましょう。
持続的な運動は、中性脂肪を減らし、善玉コレステロールを増やす効果があります。
脂質異常症の改善には、中等度の強度の有酸素運動を毎日30分以上継続することがよいとされています。
※中等度の強度の運動:楽に行える程度からややきついと感じる程度の、息が弾むくらいの運動(ウォーキング、ジョギング、水中歩行など)
できるだけ毎日行うことが理想ですが、時間がとれない場合は、1日10分でも多く歩く、階段を使うようにするなどの運動をこころがけましょう。
喫煙は善玉コレステロールを減少させ、悪玉コレステロールを酸化させ、血管壁に沈着しやすくさせてしまいます。
加えて、血管収縮、血圧上昇、心拍数増加などの循環器系に影響を及ぼします。
食物繊維たっぷりの根菜類やこんにゃくとぶりのうまみで、おいしさがパワーアップします。
また、脂質の酸化を防ぐカロテンを含むにんじんを一緒に煮込むのもポイントです。
根菜を細かく切ると早く煮あがりますよ!
ぶりの旬は12~1月です。
ぶりやさばなどに含まれるDHAやEPAなどの不飽和脂肪酸を多く取ることによって、中性脂肪値を下げることができます。
不飽和脂肪酸は酸化しやすいので、抗酸化作用に優れたカロテンやカテキン類などとあわせて調理しましょう。
また、根菜類やこんにゃく多く含まれる食物繊維にはコレステロールの吸収を阻害したり、血中コレステロールを低下させる働きがあります♪
材料(2人分) | 分量 |
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ぶり | 2切れ(160g) |
ごぼう | 1/2本(80g) |
にんじん | 小1/3本(40g) |
万能ねぎ | 1/4わ |
こんにゃく(白) | 1/4枚(55g) |
油 | 小さじ1 |
(A) だし汁 | 1/2カップ |
(A) 酒、砂糖 | 各大さじ1 |
(A) しょうゆ | 大さじ1と1/2 |
(A) みりん | 大さじ1/2 |
香味野菜を使った香り豊かな簡単レシピです!
今回はみょうがや生姜などを使用していますが、旬の食材を使ってみると季節の味を楽しめます!ぜひ試してみてください♪
牛もも肉などの赤身肉には、脂肪の燃焼を促進する働きがある「Lカルニチン」が多く含まれているため、脂質異常症の方やダイエットをしている方におすすめです。また、みょうがや生姜などの香味野菜は、風味が良く、味にアクセントを付けることができるので、薄味でも美味しく食べられます。みょうがには、カリウムやビタミンC、食物繊維が含まれているため血圧の低下や抗酸化作用、コレステロール低下作用が期待できます。
材料(2人分) | 分量 |
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牛もも薄切り肉 | 120 g |
みょうが | 1個 |
生姜 | 適量 |
大葉 | 3~4枚 |
レモン(くし切り) | 20 g |
黒コショウ | 適量 |
塩 | 1.2 g |
エネルギー(1人分):約165kcal
ボリューム感があり、食べ応えばっちりなレシピです♪ひじきやきのこ類を使用することでミネラルや食物繊維も豊富で、栄養価も高いレシピとなっています!
脂質を抑えられるように鶏むね肉のひき肉や豆腐を使用しています。豆腐に含まれる大豆イソフラボンにはLDLコレステロールや中性脂肪を下げる働きがあると言われています。そのため、良質なタンパク質が含まれる大豆製品がおすすめです!
また、食物繊維には体内のコレステロールの吸収を抑えて、排出を促す働きがあります。海藻類やきのこ類を使用した食生活を意識することがとても大切です。
ハンバーグにみぞれきのこソースがかかっており、さっぱりとしていてボリューム感のあるレシピとなっています。
材料(2人分) | 分量 |
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木綿豆腐 | 200g |
鶏むねひき肉 | 150g |
ひじき(水に戻したもの) | 30g |
生姜 | 小さじ1/2 |
玉ねぎ | 100g |
片栗粉 | 大さじ1 |
醤油 | 小さじ1 |
塩 | 0.5g |
こしょう | 少々 |
油 | 小さじ2 |
みぞれきのこソース | |
えのき | 50g |
しめじ | 50g |
大根おろし | 150 |
ポン酢 | 大さじ2 |
水 | 50ml |
(A)片栗粉 | 小さじ1 |
(B)水 | 小さじ2 |
カイワレ大根 | 適量 |
エネルギー(1人分):約295kcal