今回は、主に子どもの時に発症し、骨の変形などが起こる「くる病」について取り上げます。くる病とはいったいどのような病気なのか解説し、くる病を予防するために積極的に取り入れたい栄養素と日光浴のメリットについてもご紹介します。
骨は一度作られたらおしまいではなく、古くなった骨を壊し、新しく作り替える作業が繰り返し行われています。この新たな骨を形成していく過程で、コラーゲン線維にカルシウムとリンを中心としたミネラルから作られた結晶が蓄積することで石灰化が行われ、骨は硬く丈夫な状態になっていきます。
しかし、子どもの時にカルシウムやリンが十分に沈着せず、軟らかく弱い骨ができてしまい、変形や成長障害を引き起こす病気がくる病です。歩き始める1、2歳ごろに発覚することが多く、成人でみられる場合は骨軟化症と呼びます。
子どもよく見られる症状には、乳歯が生えるのが遅い、虫歯になりやすい、足がO脚やX脚になる、身長が伸びない、転びやすいなどが挙げられます。成人の場合は、関節の痛みや骨折、筋力の低下などがあります。
くる病の原因は遺伝性の場合もありますが、主に3つの栄養素の不足よるものが大半を占めます。
一般的に、日本人全体で摂取量が不足しているといわれています。
リンは様々な食品に入っているため、不足する可能性は低い栄養素です。しかし、遺伝子の異常によって起こる低リン血性くる病(指定難病:ビタミンD抵抗性くる病)の場合には、リンが尿中に漏れ出てしまい、血液中のリンが不足することによって起こります。
ビタミンDは骨の形成に欠かせない栄養素です。食事から取り入れたり、日光を浴びたりすることで生成されます。
食べ物から摂取したカルシウムやリンは、ビタミンDの働きによって腸から体内に吸収されます。そのため、ビタミンDが不足するとカルシウムやリンが吸収されず、弱く軟らかい骨が作られてしまいます。また、腸からのカルシウムの吸収が低下すると、体内のカルシウム濃度を上げるためのホルモンが分泌されて、古い骨が壊される骨吸収が進んでしまいます。その結果、血中にカルシウムが溶け出し、骨がスカスカの状態になってしまいます。
くる病の治療の基本は、食事療法と日光浴です。食事では、カルシウムやビタミンDを含む食品を積極的に食べるようにし、適度に日光浴を行うことでビタミンDの生合成を促します。
作用 | 多く含む食べ物 | |
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カルシウム | 骨や歯の形成 | 牛乳、ヨーグルト、チーズ、小魚、小松菜 など |
ビタミンD | カルシウムの腸管での吸収促進 | サケ、サバ、イワシ、卵黄、きのこ など |
ビタミンDは、食事から取り入れる以外に、日光浴によっても皮膚で生合成されています。そのため、過度な日光の避けすぎや日焼け止めの過剰な使用はビタミンDの合成の妨げとなります。冬は、30分程度を目安に日光浴をしましょう。春夏は紫外線が強くなるため、木陰などで10~15分程を目安に、手のひら日光浴をしてみましょう。手のひらや足裏は、メラニン色素が少なく日焼けしにくい部分であるだけでなく、ビタミンD生成のためには他の部位に劣らないので、窓から手を出して太陽に向けるだけでも十分です。
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カルシウムは、いかに効率よく摂ることができるかが大切です。一般的に、カルシウムは吸収率が低いため、ビタミンCやDと一緒に摂ることができる食材を組み合わせましょう。
今回は、カルシウムを多く含む牛乳、ビタミンCを含むほうれん草、ビタミンDを多く含む鮭としめじを使用しています。栄養満点で、おなかも心もほっこりと温まる1品です。栄養素を意識しつつ、具材を変えてお好みのアレンジを見つけてみてはいかがでしょうか?
材料(3~4人分) | 分量 |
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さけ | 3切れ(300g) |
ぶなしめじ | 1袋(100g) |
玉ねぎ | 1/2個 |
ほうれん草 | 1/4束(50g) |
オリーブ油 | 大さじ2 |
片栗粉 | 大さじ2 |
牛乳 | 350㏄ |
水 | 100㏄ |
塩麹 | 大さじ1 |
味噌 | 小さじ1 |
粗挽き胡椒 | 少々 |
パセリ粉 | 少々 |
意外と知られていませんが、水菜には小松菜よりもカルシウムが豊富に含まれています。また、カルシウムの吸収を助けるビタミンCも含んでいます。ビタミンCは加熱に弱いため、生食がおすすめです。さらに、サバの水煮缶を使うと加熱の必要もなく、カルシウムの吸収率を高めるビタミンDも一緒に摂ることができます。
材料(3~4人分) | 分量 |
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水菜 | 1/2袋(100g) |
サバ水煮缶 | 2缶(380g) |
ポン酢 | 大さじ2 |
豆板醤 | 小さじ1/4 |
ごま油 | 大さじ1 |
白いりごま | 大さじ1 |
刻みのり | 適量 |