不眠症とは、何らかの原因で十分な睡眠が取れず、日中に倦怠感や疲労感、集中力の低下などが起こり、日常生活に悪影響を及ぼしている状態をいいます。
必要な睡眠時間は人によって異なるため、睡眠時間の長短ではなく、朝起きたときにすっきりしているかなど、体や気分の不調が無いかどうかで判断されます。
不眠症は大きく4つのタイプに分かれます。
タイプ | 症状 |
---|---|
入眠障害 | 寝ようとしてもなかなか寝付けない |
中途覚醒 | 途中で2回以上目が覚める |
早朝覚醒 | いつもより2時間以上早く目が覚め、その後眠れない |
熟眠障害 | ぐっすり眠った満足感がない |
脳の働きに影響が現れ、仕事や家事の作業効率が低下します。
注意力が散漫になりミスが多く、気分も不安定になり、イライラしたり怒りっぽくなったりします。
また、体をつくる成長ホルモンの分泌が悪くなり、子どもの成長の妨げになったり疲労やけがからの回復が遅れたりします。
免疫物質は眠っている間につくられます。
睡眠不足が続くと免疫物質の量が減り、病気に対する抵抗力も低下してしまいます。
不眠症の原因は周りの環境やストレス、加齢や病気によるものなど、さまざまなものがあります。
ここでは代表的な原因をみていきましょう。
気温(室温)、騒音、明るさ、同じ部屋で寝る人の体の動きなどが挙げられます。
子どもや病気の人に気を配る必要があるときも不眠症の原因となります。
強いストレスを受けると、自律神経機能の交感神経が優位となって興奮状態になり、睡眠が妨げられます。
過度に肥満した人などに睡眠中の無呼吸が起こる「睡眠時無呼吸症候群」や太ももやふくらはぎなどに虫がはうような不快感の起こる「むずむず脚症候群」、睡眠中に足首から先にピクッとした動きが頻繁に起こる「周期性四肢運動障害」が主な疾患として挙げられます。
ほかには脳出血、脳梗塞、パーキンソン病などの脳に障害が生じる疾患も不眠症に関係しています。
うつ病や不安障害、統合失調症などの精神疾患にはほとんど不眠が伴います。
海外旅行などにいったりしたときに起こる「時差ぼけ」や夜間の交代勤務、夜更かしなどで体の中の睡眠・覚醒が起こるタイミングがずれると不眠になります。
高齢者は生理的にも睡眠が浅くなるため、中途覚醒が多くなります。
また、体温が低くなると眠気がでますが、運動量も少なくなり昼夜の体温の差が小さくなるため体温が高いままとなり、なかなか寝付けないということもあります。
高齢者の睡眠は「寝付きが悪い」「夜中に何度も目が覚める」「朝早くから目が覚める」という特徴があります。
若い人は床に入ってからおおよそ30分程度でもっとも深い眠りに入りますが、高齢者の場合はまず寝付くまで約40分で、深い睡眠も若い人より少なく浅い眠りが多いため、夜中に何度も目が覚めてしまうのです。
不眠症は、病気が原因のもの以外については予防することが可能です。
生活習慣や食生活を見直して、よい睡眠を取れるようにしましょう。
食事は1日3食を決まった時間にバランスよく取りましょう。
特に体内時計のリズムを整えるには朝食が欠かせません。
脳の栄養源はブドウ糖だけです。朝から活発に働かせ、リズムを整えるためにしっかりと取りましょう。
タンパク質は体をつくる原料となり、特にアミノ酸の一種であるトリプトファンは脳細胞の活動に関与している神経伝達物質「セロトニン」の原料となります。
セロトニンは眠りを持続させたり、気分を安定させたりする作用があります。
セロトニンはさらに、体内時計を調節する神経伝達物質「メラトニン」の原料となります。チーズやまぐろ、鶏の胸肉などに多く含まれます。
栄養素 | 作用 | 多く含む食べ物 |
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ビタミンB12 | 体内リズムを整えるなど、 脳や神経系の働きを助ける |
卵、チーズ、あさり、しじみ、牛乳 |
ビタミンC | 抗ストレス作用 | ブロッコリー、ほうれん草、じゃがいも |
カルシウム | 神経の興奮抑制 筋肉の弛緩緊張の調節 |
牛乳、チーズ、煮干し、干しえび、小松菜、水菜 |
マグネシウム | 神経の興奮抑制 筋肉の弛緩緊張の調節 |
大豆、納豆、アーモンド、玄米 |
ビタミンB12は神経細胞内のタンパク質や核酸の合成を助けたり、修復したりする働きがあります。不足すると下肢のしびれや神経障害を起こします。
ビタミンCはストレスを受けたときに体が抵抗するためにつくりだす副腎皮質ホルモンの合成に関与しています。ストレスを受けやすい人はより多めに取りましょう。水溶性ビタミンのため、過剰症の心配はありません。
カルシウムやマグネシウムは神経ミネラルと呼ばれ、神経の興奮を抑制する作用を持っています。
また、筋肉の弛緩緊張のバランスを調整する役割もあります。心身共にリラックスさせるのに大切なミネラルです。
コーヒーやお茶、ココアなどカフェインを多く含む飲み物は就寝前には避けましょう。カフェインは覚醒作用があるため、目が冴えて眠れなくなる場合があります。
アルコールはリラックス効果や食欲増進の効果があり、確かに寝付きはよくなりますが、眠るために飲むという習慣は、深い眠りが減るなど眠りの質が悪くなったり、利尿作用により中途覚醒が多くなったりといった症状を引き起こします。眠るために飲むのは控えましょう。
1日の体温の変化に高低差があるほど体内リズムは崩れにくく、深い睡眠が取れるようになります。
生活の中で無理なく続けられる運動を習慣付けましょう。
自分なりのストレス解消法を持つことも不眠症を予防するには大切です。
読書や音楽観賞、アロマテラピーなどできるだけ自分がリラックスできる環境をつくりましょう。
軽い運動やストレッチ、ぬるめのお湯に入浴することもオススメです。
睡眠を阻害するストレスを撃退してくれるビタミンCをたくさん含むじゃがいもと、同じく抗酸化力を持つビタミンEやホルモンをつくる原料となるタンパク質を含んだツナ(まぐろ)をトリプトファンたっぷりのチーズと豆腐でグラタンにしました。
ホワイトソースを使っていないので、カロリーも押さえられます。
じゃがいもの旬は2~5月です。
じゃがいもに含まれるビタミンCはストレスに対抗するためのホルモンを合成するのに役立ちます。アーモンドや魚介類に含まれるビタミンEも抗酸化作用があるため、一緒に取るとより効果的です。
快眠を誘う神経伝達物質をつくる原料のタンパク質と一緒に取れば、ストレスもなく、ゆっくり眠れますね♪
材料(2人分) | 分量 |
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じゃがいも | 中2~3個 |
絹ごし豆腐 | 1/2丁 |
とろけるチーズ | 2枚 |
ツナ缶(ノンオイル) | 1缶 |
塩こしょう | 適量 |
今回は不眠の予防に効果的な食材を使ったレシピです。
忙しい朝にぴったりの簡単レシピですのでぜひ試してみてください♪
「バナナ」と「チーズ」を使ったレシピです。
バナナの食べ頃は、シュガースポットと言われる黒い斑点が出てきたときです。これが完熟の印となります。
また、バナナの追熟は、バナナ自体が放出するエチレンガスによって進むため、袋から出しておいた方が穏やかになります。冷蔵庫で保存をすると、色が黒く変色し傷んでしまうため、皮を剥き、1本ずつラップに包んで冷凍保存することがおすすめです。バナナやチーズには、トリプトファンという必須アミノ酸が多く含まれています。トリプトファンは、体内で合成ができないため、食事から摂取をする必要があります。
トリプトファンはセロトニンの原料となり、セロトニンがメラトニンという睡眠を促すホルモンの原料となります。
今回使用する食材以外にも、豆腐などの大豆製品や、肉、魚、乳製品などタンパク質を多く含む食品にトリプトファンは多く含まれます。
材料(1人分) | 分量 |
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食パン | 1枚 |
バナナ | 1本 |
スライスチーズ (ピザ用のチーズでもOK) |
1枚 |
はちみつ | 小1 |
エネルギー(1人分):約300kcal