タンパク質は、皮膚、筋肉、臓器、血液、髪の毛、爪、骨などをつくる最も重要な構成成分です。さらに、ホルモンや酵素、神経伝達物質、抗体などの原料になります。
体の構成成分として使われるだけではなく、炭水化物が不足した時に、1g当たり4kcalのエネルギー源として利用されます。
動物性の食品では、肉類、魚介類、卵、乳製品などに多く含まれます。
植物性の食品では、大豆・大豆製品、ナッツに多く含れます。その他、ごはんやパン、野菜類、果物類にも含まれています。
人体を構成するタンパク質は20種類のアミノ酸で構成されています。アミノ酸の組み合わせによって、体の様々な組織が作られています。
20種類のアミノ酸のうち9種類は体内で合成できないアミノ酸のことを必須アミノ酸と呼びます。そのため、食事から毎日摂取する必要があります。
ここでは、必須アミノ酸9種類が担う重要な役割とそれらを多く含む食品と合わせて確認してみましょう!
〈必須アミノ酸9種類〉
必須アミノ酸の簡単な覚え方をご紹介します♪
・あめふりヒトイロバス
これは、アミノ酸の頭文字を取った覚え方です。
アミノ酸の「ア」、メチオニンの「メ」、フェニルアラニンの「フ」というような感じ、食品成分表などを見る時の参考にしてみてください。
種類 | 働き | 多く含む食品 |
イソロイシン | 成長促進、筋力強化 神経機能や肝機能を高める |
鶏肉、鮭、牛乳、チーズ |
ロイシン | 肝機能を高める、筋力強化 | 牛肉、レバー、ハム、牛乳、チーズ |
リジン(リシン) | 体組織の修復、代謝の促進 | 魚介類、大豆製品、肉類、牛乳、レバー、卵 |
メチオニン | 抑うつ症状改善 ヒスタミンの血中濃度低下 |
牛肉、羊肉、レバー、牛乳、魚介類、卵 |
フェニルアラニン | 鎮痛作用、抗うつ作用 | 肉類、魚介類、大豆製品、卵、そば、チーズ、種実類 |
スレオニン(トレオニン) | 脂肪肝予防、成長促進 | 卵、スキムミルク、ゼラチン |
トリプトファン | 精神安定、鎮痛・催眠効果 | 牛乳、チーズ、大豆製品、レバー、卵、種実類 |
バリン | 血中窒素バランスンの調整整、 肝機能の改善、筋肉強化 |
チーズ、レバー、海藻類 |
ヒスチジン | 成長促進、神経機能のサポート | 鶏肉、魚介類 |
A:1日の摂取基準量を確認してみましょう!
厚生労働省は国民の健康の保持・増進や生活習慣病の予防を目的として、健康な方を対象にした栄養素の摂取量の基準「日本人の食事摂取基準」を策定しています。
〈タンパク質の1日の摂取基準量〉
年齢、性別などによって必要なタンパク質量は異なります。推奨量とは、ほとんどの人が必要量を満たす量のことをいいます。男性15~64歳は65g/日、65歳以上は60g/日、女性15~17歳は55g/日、18歳以上は50g/日となっています。
タンパク質は筋肉の材料となる欠かせない栄養素であることから、フレイル予防のために高齢期では不足なく摂取することが望ましいです。
性 別 | 男 性 | 女 性 | ||||
年齢(歳) | 推定平均必要量(g/日) | 推奨量(g/日) | 目標量
(%エネルギー) |
推定平均必要量(g/日) | 推奨量(g/日) | 目標量
(%エネルギー) |
18~29 | 50 | 65 | 13~20 | 40 | 50 | 13~20 |
30~49 | 50 | 65 | 13~20 | 40 | 50 | 13~20 |
50~64 | 50 | 65 | 14~20 | 40 | 50 | 14~20 |
65~74 | 50 | 60 | 15~20 | 40 | 50 | 15~20 |
75 以上 | 50 | 60 | 15~20 | 40 | 50 | 15~20 |
(日本人の食事摂取基準(2020年版))
A:代表的な食品のタンパク質の目安量をから考えてみよう!
・納豆1パックは約7g → 約7パック分 ・牛乳1杯は約6g → 約8杯分
・卵1個は約6g → 約8個分 ・チキンサラダ1個は約20g → 約2.5個分
・鮭1切れは約18g → 約3切れ分
上記の食材を1回ずつ1日の食事に取り入れるだけで、タンパク質を約57g摂取することができます。ひとつの食材のみから摂取するのではなく色んな食材を組み合わせて摂取するようにしましょう。そして、動物性タンパク質と植物性タンパク質の両方をバランスよく組み合わせることも大切です。
A:アミノ酸スコアを意識しよう!
良質なタンパク質の指標となるものがアミノ酸スコアです。アミノ酸スコアとは、食べ物に含まれるタンパク質量と必須アミノ酸がバランスよく含まれているかを数字で表したものです。種類と量がバランスよく含まれていると、アミノ酸スコアは100となります。該当する食品には、肉、魚、卵、乳製品、大豆があります。
食品 | アミノ酸スコア | 食品 | アミノ酸スコア |
卵 | 100 | 米(精白米) | 61 |
牛乳 | 100 | 小麦粉(薄力粉) | 42 |
牛肉(脂身なし) | 100 | じゃがいも | 73 |
豚肉(脂身なし) | 100 | さつまいも | 83 |
納豆 | 100 | アーモンド | 50 |
上の表によると、肉や卵に比べると、穀物のアミノ酸スコアが低くなっています。ところが、アミノ酸スコアが低い食品であっても、複数の食品を組み合わせて摂取することでアミノ酸スコアがは改善することができます。以下の例も、参考にしてみてください。
例)食パンとコーヒーのみの場合+目玉焼き
例)白米と味噌汁のみの場合+納豆
例)パスタとサラダのみの場合+ヨーグルト
この様に1品追加すると食事全体のアミノ酸スコアが100に近づきます。
その他、主食・主菜・副菜を揃え、多様な食品を組み合わせることで、バランスの良い食事を取ることができます。
A:吸収率をアップさせるため食べ合わせを意識してみましょう!
➀ビタミンB6を一緒に摂取する
ビタミンB6は、水溶性のビタミンでタンパク質の合成に欠かせない栄養素です。そのため、タンパク質の摂取量が増えるとより必要となります。一緒に摂取することで、タンパク質の利用・吸収の効率がアップします。多く含む食品は、サンマ、アジ、玄米、牛レバー、バナナなどがあります。
②ビタミンCを一緒に摂取する
ビタミンCは、水溶性のビタミンでコラーゲン(筋肉、皮膚、血管などの主成分のタンパク質)の合成に欠かせない栄養素です。一緒に摂取することで、タンパク質の利用・吸収の効率がアップします。多く含む食品は、ブロッコリー、キウイ、オレンジ、じゃがいもなどがあります。
タンパク質を過剰摂取すると以下の症状が現れるおそれがあります。
➀腎機能障害
タンパク質は、炭水化物や脂質のように体内に蓄えることができないため、取り過ぎた分は尿とともに体外に排せつされます。このため、取り過ぎが続くと、尿をつくる腎臓に負担をかけてしまいます。長期間にわたりタンパク質の過剰摂取が続くと、腎機能が低下し、腎障害につながる可能性があります。
②腸内環境の悪化
特に、動物性タンパク質や脂質は、悪玉菌のエサとなりやすく腸内環境を悪くする可能性があります。そのため、過剰に摂取してしまうと便秘や下痢を引き起こすことがあります。腸活についてはこちら
タンパク質が不足すると以下の症状が現れるおそれがあります。
➀筋肉の減少
タンパク質は、筋肉の主要な構成要素であり、筋肉の成長と修復に不可欠です。タンパク質が不足すると、筋肉量が減少し、筋力や運動能力が低下してしまう要因となる可能性があります。
②太りやすくなる
筋肉は、エネルギーの消費が高く、基礎代謝全体の約20~25%を筋肉のエネルギー消費が占めるとされています。そのため、タンパク質不足による筋肉量低下は肥満を招きやすくなります。
➂免疫機能の低下
タンパク質は、免疫細胞や抗体の構成成分であるため、免疫機能の維持に欠かせません。タンパク質不足の場合、免疫機能が低下しやすくなり、感染症への抵抗力が弱まる可能性があります。
➃高齢者のフレイル率の増加
フレイルは加齢に伴い身体の予備能力が低下し、健康障害を起こしやすく虚弱した状態のことを指します。タンパク質が不足し低栄養に陥ると、フレイルを進行させ、筋肉量が低下するサルコペニアをも引き起こします。そのままにしておくと、転倒などのリスクが上がり寝たきりや要介護となるリスクが高まります。しっかりとタンパク質を摂取し筋肉を維持することが大切です。フレイルについてはこちら サルコペニアについてはこちら
タンパク質は三大栄養素のひとつであり、炭水化物・脂質と並び体にとって必要不可欠な栄養素です。普段の生活を見直し、タンパク質の摂取量に不足がないようにしましょう。効率よく摂取して、健やかな体作りにつなげてましょう!