胎児は、栄養素を全て母体の血液から補給し、乳児においても、主として母乳から栄養素を補給しています。母乳は母親の乳腺中の血液からつくられるため、母体の栄養状態は母体の健康維持のみならず、胎児の発育、分娩、授乳を含めた重要な役割があります。
妊娠すると子宮や乳房はもちろん、代謝・消化器・泌尿器などの体の変化が起こります。また、妊娠中と出産後はホルモンの影響で気持ちが不安定になったり、神経質になりやすくなります。
妊娠中はホルモン分泌が盛んとなり、そのなかには脂肪を蓄える役割を持つホルモンも含まれ、胎児の代謝に必要なエネルギー確保や産後の回復のために食事から得られたエネルギーを蓄えやすくしています。妊娠後半期から分娩後にかけての肥満は、その後も肥満状態が維持される傾向にあり、生活習慣病のリスクファクターでもあるので注意が必要です。
過体重の場合の極端な減食は胎児に悪影響を及ぼすので、バランスの良い食事を取るように心掛けましょう。
逆に妊娠前のやせた妊婦や若年妊婦では、母体体重の増加量が少ない傾向にあります。妊娠中の適正な体重増加は、妊娠前の体型によって異なります。
つわりは妊娠5~6週頃に現れる食物嗜好の変化、食欲不振、吐き気、嘔吐、胃腸障害などの消化管症状です。生理的なものですが、精神的なストレスが原因となることもあります。つわりが悪化して、栄養失調、脱水症状、代謝障害などの全身症状を示すものを「悪阻(おそ)」といいます。
嗜好の変化があり食欲がないことが多いので、好きなものを食べたい時に食べるようにしましょう。さっぱりしたものや冷たいものなど献立を工夫し、食べやすいようにしましょう。
妊娠中は胎児や胎盤にも鉄を使用するため、貧血になりやすくなります。妊娠中に最も多くみられる貧血は鉄欠乏性貧血であり、妊娠に起因するものを妊娠貧血といいます。症状としては、めまい、動悸、息切れ、頭痛などがあげられます。
鉄は、タンパク質やビタミンCと一緒に摂取すると吸収が高まります。赤血球やヘモグロビンが正常につくられるためには、ビタミンB12、葉酸なども必要です。
「妊娠高血圧症候群」とは、妊娠20週以降から分娩後12週まで高血圧がみられる場合、また高血圧にタンパク尿を伴ういずれかの場合で、かつ、これらの症状が単なる妊娠の偶発合併症ではないものをいいます。
肥満や食塩の取りすぎは高血圧につながります。適正エネルギー量の食事を心掛けましょう。また、タンパク質は胎児の発育に不可欠ですので、適正量の良質のタンパク質を取りましょう。
胎児は有害因子から影響を受けやすく、その結果、死亡や奇形、発育遅延など、様々な障害を起こしやすくなります。
また、アルコールは乳汁中に移行します。
胎児は有害因子から影響を受けやすく、その結果、死亡や奇形、発育遅延など、様々な障害を起こしやすくなります。また、アルコールは乳汁中に移行します。
葉酸が不足すると、胎児や乳児では脳神経細胞の成長や代謝に異常が現れて、発育不全を起こします。
葉酸は胎児や乳幼児の成長に使われるため、妊娠期や授乳期は特に摂取することがすすめられています。葉酸は妊娠期や授乳期では通常の2倍程度必要となり、妊娠期では240µg、授乳期では100µg多く取ることが推奨されています。