2005年に成立した食育基本法において、食育とは「生きるための基本的な知識であり、知識の教育、道徳教育、体育教育の基礎となるべきもの」と位置づけられています。単に料理教育ということではなく、生涯にわたって健やかに生きていくために必要な健全な食生活の実現、栄養学、伝統的な食文化、食事マナー、地元の農産物や生産者などについて、総合的に学ぶ教育のことをいいます。様々な経験を通じて、自ら望ましい食生活を考える習慣や、食に関する様々な知識、食を選択する判断力を身に付け、それを実現できることで、食事を通じて健康な体づくりと維持、生活の質(QOL)の向上につながるといえます。
近年、栄養の偏り(エネルギーの過剰摂取および栄養素の摂取不足)や食生活の欧米化(脂質摂取量の増加)、生活様式の変化に伴う中食や外食の増加、過度な痩せ志向による低栄養など、食を取り巻く環境の変化により、生活習慣病の増加など健康面への影響が懸念されています。そのため、食に関する正しい知識と食習慣を身に付け、健康的な食生活を実践するための力を育てることが重要視されています。
現在、食をめぐる問題には次のようなものがあるとされています。
食べ物そのもの、食べ物の作り手、お店の人、料理を作ってくれた人、そして自分がそれを食べられることなど全てを含めた食べ物に対する感謝の気持ちを持たない人が増えています。
その結果、日本の食品ロス量は643万トンにおよびます。
日本の食文化は、正月や各節句の時にお祝いする行事食としての食文化と、各地で採れる食材を使って昔から受け継がれている地方での独特の食べ物・食べ方の食文化があります。しかし、技術の発達とともに冷凍・冷蔵など様々な保存が可能となり、世界中、日本中どこからでも色々な食べ物が運ばれてくる現在、これらの日本人の知恵が凝集した伝統食が失われつつあります。
日本では昔から主食(ご飯)を中心とした食生活が行われてきましたが、戦後、食生活の洋風化が急速に進み、主菜(おかず)の割合が増え、中でも特に畜産物(肉、乳製品、卵など)や油脂の消費が増えてきました。それにより、主食である米などの穀類に多く含まれる炭水化物の消費が減少する一方で、脂質の摂取が増加してきました。
20歳代の朝食を欠食する割合が増えています。また、塾通いやテレビの深夜番組などの影響により夜遅くまで起きているようになった結果、朝食を欠食する小・中学生も増加傾向にあります。
30~60歳代の男性の3割が肥満者となっています。糖尿病については、「強く疑われる人」、「可能性が否定できない人」が増加傾向にあります。
高血糖、高血圧、高脂血、内臓脂肪型肥満などは別々に進行するのではなく、「1つの氷山(メタボリックシンドローム)から水面上に出たいくつかの山」のような状態であり、根本的には食生活の改善が必要とされています。
特に、20~39歳の若い女性のやせの割合が増えています。
食料自給率は、その国で消費される食料がどのくらい国内で生産されているか(自給の度合い)を示す指標です。日本の食料自給率は、昭和40年度には73%でしたが、その後減少し、平成30年は37%となっています。日本人の食べ物の63%は輸入品ということになり、主な先進国と比べても、我が国の食料自給率は主要な先進国の中で最低水準となっています。
昨今の*BSEや豚インフルエンザ、輸入野菜の残留農薬、食品の偽装表示の問題など、食の安全や安心を揺るがす出来事が相次いだことから、食の安全・安心への関心が高まっています。
*BSE(牛海綿状脳症)
狂牛病とも呼ばれ、牛の脳の中に空洞ができ、スポンジ(海綿)状になる病気。
これら「食」にまつわる問題は、必ずしも1分1秒を争うものばかりではありませんが、このままだと将来「食」の問題がさらに多く、複雑になる可能性があります。一人一人が意識し、実践して、社会全体で食育が推進されることが必要なのです。
日本では「食育基本法」、「食育推進基本計画」を施行し、食育を国民運動として推進していくことを明らかにしています。「食」に関する知識と選択する力を持ち、健全な食生活の実践を図る事が必要です。
これらの食に関する正しい知識や望ましい食習慣を身に付けるためには、国、地方公共団体、家庭、学校、地域、ボランティア団体、企業などが連携し、取り組んでいくことが重要です。
食育はさまざまな人に、さまざまな場面で、さまざまな目的で行われる、幅広い教育であるといえます。
食育というと子どもへの教育が思い浮かぶ方も多いと思いますが、子どもに教えるものだけではありません。
これらは全て「食育」です。
食育は学校で授業形式で行われるものや家庭科の調理実習、給食の時間など学校だけで行われるものではありません。家庭の食卓でのしつけ、食育をテーマにした料理教室、食育に関するセミナーや講演会、食に関するイベントや農場訪問など学校以外の場面でも行われます。
食育にはさまざまな目的が考えられます。例えば…
など、多岐に分かれています。
私達が「いただきます」と口に運ぶ食べ物は、どこから来て、どこへ行くのでしょう?
食べ物は自然環境の中で生産され、移動し(流通)、販売、調理されて食べられます。一方、私達の食べるという行動は様々な心理的、環境的影響を受けています。そして、私達は自然環境に働きかけて食物を生産、流通、入手、調理、廃棄し、食べて、心身をつくり、次の生産活動で自然に働きかけるという循環性をもっています。
つまり、食べるということは、単に個人の中で完結されてしまうのではなく、地域や環境も含めた様々なつながりと広がりをもった行動なのです。
日本成人病予防協会では、平成22年度より『バナナうんちで元気な子!~生活リズムを整えよう~』と題し、文部科学省、「早寝早起き朝ごはん」全国協議会、公益社団法人日本PTA全国協議会に後援をいただき、全国の小学校で出前授業を実施しています。授業では、早寝早起き朝ごはんの大切さ、食べ物の選び方、体内に入った食べ物の消化・吸収・代謝・排泄の仕組み、食べ物や食べ方によって排泄される便の様子(種類)が違うこと、人間の体には1日のリズムがあることなどについて学びます。子ども向けのテキストを作成し、うんちのボードやエプロンシアターを使いながら、ダンスを踊ったり、歌ったりと、参加型の授業を行っています。
また、2022年より、大学生講師育成プロジェクトを開始しました。これからの時代を担う若い世代をターゲットとし、食をはじめとした健康の大切さを伝えられる人材育成を行っています。
食育活動「バナナうんちで元気な子」の大学生講師育成プロジェクトがスタートしました!
食育というと子どもへの教育を思い浮かべる方も多いと思いますが、子どもだけに必要な知識ではありません。子どもの日々の食事には、大人の正しい知識や関わりが必要不可欠です。また、食事は一生涯にわたって続くものであるため、どのような栄養素をどのくらい摂ったらよいか、年齢やり患している病気等ごとの正しい食事の知識などは、大人にも欠かせません。
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