夏頃から、子どもを中心に流行する手足口病やRSウイルス、溶連菌をはじめとした感染症が大流行しています。そして、最近徐々に患者が増えているのがマイコプラズマ肺炎です。
マイコプラズマ肺炎が、風邪と間違われがちな理由や症状、感染経路、さらに予防方法について解説します。
マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症です。厚生労働省によると、14歳以下の子どもに多いといわれていますが、最近では世代問わず感染者が急激に増えてきているため、注意喚起されています。
マイコプラズマ肺炎は、潜伏期間が長く、肺炎の一種であるものの体力がそれほど落ちないため、ただの風邪だと思って出歩き、周りにうつしてしまう人が多いことが特徴です。そのため、「歩く肺炎」とも呼ばれています。
肺炎マイコプラズマは、ウイルス並みに小さく、風邪や肺炎、気管支炎などを引き起こす細菌の1つです。一番の特徴は、一般的な細菌とは少し構造が異なり、有効な抗生物質が限られてしまうことです。
一般的な細菌は自分を守るために細胞壁を持つのですが、肺炎マイコプラズマは細胞壁がなく、細胞膜が厚く発達しているのが特徴です。そのため、細胞壁に作用して殺菌をする一般的な抗生物質が効きません。さらに、抗原の構造が変化しやすいため、ワクチンの開発も難しいのが現状です。
発熱や全身の倦怠感、喉の痛み、鼻水、頭痛などの症状の他、痰が絡まない乾いた咳が出ます。しかし、頑固な咳だけで発熱がない場合もあり、特定が難しいことがあります。咳は、少し遅れて出始めることもあり、徐々に悪化し、しつこく続きます。
初期症状は風邪にとても似ていますが、マイコプラズマ肺炎の場合は、熱が下がった後も3~4週間ほど咳が続き、特に、夜間や早朝に激しく出ることが多いのが特徴です。人によっては、耳の痛み、吐き気、下痢、湿疹、ゼーゼーと喘息のような喘鳴などの症状が出ることもあります。
感染した人の咳のしぶきを吸い込んだり、接触したりすることによって感染するといわれています。保育園や学校などの集団で過ごす場面の他、家庭などで流行しやすいとされています。
感染してから発症するまでの潜伏期間は、長くて2~3週間ほどとされています。知らず知らずのうちに感染していることも多く、感染経路を特定できずに感染が広がりやすい感染症です。さらに、診断が難しく、確定されるまでに時間がかかります。
軽症の場合には、基本的には自然治癒を待ちますが、肺炎を伴う場合には抗菌薬で治療を行うこともあります。さらに、重症化した場合には入院管理となります。
しかしながら、成人で肺炎を伴わない気管支炎であれば、可能なかぎり抗菌薬による治療を行わないことが推奨されています。
普段から石けんを使用し、流水による手洗いをしっかりと行うことが大切です。また、家族間であってもタオルの共用は避けましょう。特に、保育園や幼稚園、学校など集団の閉鎖的な施設や、家庭など濃厚接触の可能性が高い場所では、換気をこまめにして、手洗い、うがい、アルコール消毒をしっかりと行いましょう。
健康的な身体をつくるためには、毎日規則正しい生活を送りましょう。免疫力を高めるために、タンパク質やビタミン類を意識したバランスの取れた食事を取り入れましょう。また、十分な睡眠時間を確保し、体をしっかりと休めることも、感染しないためには大切です。
流行している時期は、特に外出の際にはマスクを着用しましょう。マスクを着用する場合には、鼻の上から顎の下までを覆い、できるだけすき間が出来ないようにしましょう。
咳の症状がある場合には、マスクを着用し、咳エチケットで周囲への感染拡大を防ぎましょう。咳が長引くなどの症状がある場合には、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
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