私たちが毎日必ず口にしているお水には、「硬水」「軟水」といった区分があるのはご存知でしょうか。言葉では聞いた事のある方も多いと思いますが、何がどう違うのか、ハッキリ答えられますか?
今回は、「硬水」「軟水」の違いや、それぞれがどういった用途に向いているのかをご説明します。
硬水と軟水の違いは、ズバリ「硬度」になります。
といっても、硬度の高い硬水は触ってみると硬く、軟水は柔らかい…というわけではありません。1000ml中に含まれるマグネシウムとカルシウムの含有量を数値化したものを硬度と呼び、その硬度によって硬水か軟水かが決まります。
WHO(世界保健機関)の基準では、硬度が0~60mg/l 未満を「軟水」、60~120mg/l 未満を「中程度の軟水」、120~180mg/l 未満を「硬水」、180mg/l 以上を「非常な硬水」と定義しています。
日本はWHOとは基準が異なり、一般的に硬度0~100mg/l を軟水、101~300mg/l を中硬水、301mg/l 以上を硬水と分類しています。
ミネラルウォーターは、主に降った雨や雪が地下に染み込み、地下水となったものが原水です。雨水が地下に染み込む過程で土壌や岩盤に接することで、ミネラルが水に溶け出して硬度が増していきます。
土壌の環境によっても違ってきますが、基本的に水の流れが速く土壌にとどまる時間が短いと、溶け出すミネラルが少なくなるため軟水となります。そして、水の流れがゆるやかで土壌にとどまる時間が長くなると、溶け出したミネラルが多くなるため硬水となることが多いとされています。
日本は傾斜が多く急な地形が多いため、水の流れが速く、軟水が主になります。一方、ヨーロッパや北米は、地形がゆるやかで、水が土壌に長くとどまるので硬水が主になります。
ちなみに、アメリカは国土が広いため、ニューヨークは軟水、ラスベガスは硬水というように地域によって水の硬度が異なります。
硬水と軟水、それぞれ摂取するメリット・デメリットがあります。
硬水は、日本人に不足しがちなミネラルであるカルシウムやマグネシウムを多く含むため、気軽に飲んで補うことができます。
マグネシウムは下剤にも使われている成分なので、便秘の解消に効果があります。毎朝コップ1杯程度を飲むのがおすすめです。
血圧を下げる効果があるマグネシウムを摂ることで、動脈硬化を予防することができます。
カルシウムが歯の再石灰化を促してくれるため、歯が硬くなり、虫歯を予防することができます。(ただし、歯石も硬くなってしまうので日頃からのケアが必要です)
先述の通り、硬水には下剤にも使われるマグネシウムが含まれています。飲み過ぎると、お腹がゆるくなることがあるので、胃腸の弱い人や硬水を飲みなれていない人は、中硬水など硬度が高すぎないものを少量から飲んで慣らすようにしましょう。
腎臓の機能に問題がある人は、カルシウムのろ過で負担をかけてしまうため結石のリスクが高まります。医師に相談の上で飲むようにしましょう。
ちなみに、医薬品やサプリメントでカルシウムやマグネシウムを摂っている人も、硬水を飲むことで過剰摂取になる恐れがあるので、医師や薬剤師に相談しましょう。
洗髪や洗顔に使う水が硬水だと、髪がパサパサ・ゴワゴワしたり、肌がつっぱって乾燥したりします。そのためヨーロッパでは、洗髪は2~3日に1回だけだったり、水での洗顔はせず、拭き取り化粧水のみで済ませたりすることも多いようです。日本では硬水の地域が限られるため、硬水で洗髪などをする機会はあまり無いですが、海外に行くときはその土地の水が硬水かどうか調べてみるといいかもしれません。
硬水に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンが、石けんと強く結合して石けんカスを発生させます。石けんカスは水に溶けないために、十分に洗浄力を発揮することができず、また、髪や皮膚に残ってしまうため、髪が傷んだり、肌が荒れたりします。
軟水はマグネシウムがほとんど含まれないため、お腹に優しく、胃腸が未発達な赤ちゃんでも飲むことができます。
軟水は髪や肌に優しいため、毎日髪や体を洗っても、髪の傷みや肌荒れの心配がありません。
カルシウムイオンやマグネシウムイオンが含まれないため、石けんが十分に泡立ち、少量で汚れを落とすことができます。
軟水にはミネラルがほとんど含まれていないため、ミネラルを補給する手段として利用することはできません。
硬水、軟水はそれぞれ味が異なり、軟水はまろやかでさっぱりとした口当たりで、硬水は人によっては苦みや飲みにくさを感じることもあるようです。
硬度の違いは、そのまま飲んだときの味だけでなく、料理に使う際にも影響があります。それぞれ飲み物や料理によってどのような違いがあるかをまとめたので、料理の際に参考にしてみてください。
硬水には苦みを感じる人がいると先ほど述べましたが、コーヒーや紅茶、緑茶といった風味の出る飲み物に影響を与えます。紅茶は硬度60以下の軟水で淹れるのが良いという研究報告もあるようです。硬水で紅茶を入れると色が濃くなり苦みが増すと言われており、香りのある飲み物は軟水でつくるのがオススメです。
アルコール醸造においては、硬水だとミネラルを栄養素とする微生物の発酵が進んで辛口となります。アルコールの中でも、ウイスキーでは硬水だと味に深みが出て、軟水ではなめらかで軽快な風味になるそうです。
軟水は、素材のうまみ成分を引き出し、米や野菜を柔らかくする作用があるので、出汁をきかせた和食や煮物をつくるときや、白米を炊くときに最適です。
反対に、硬水は水に含まれるカルシウムが灰汁を出しやすくして、素材のうまみも一緒に流れ出てしまうため、和食のような素材を活かした料理には不向きとなります。硬水は硬い肉を柔らかくして臭みをとる作用があるので、ビーフシチューや赤ワイン煮込みといった洋風の煮込み料理に向いています。
他にも、硬水には食物繊維を固くする効果があり、硬水でお米を炊くとパラっとした炊きあがりになるので、パエリアやチャーハンといった料理をつくる際や、パスタを茹でる際に使うのがオススメです。
赤ちゃんや小さな子どもは内臓が未発達なため、ミネラルを多く含む硬水を飲ませると内臓に負担がかかり、腹痛や下痢を起こす可能性があります。また、粉ミルクには赤ちゃんにとって最適な量のミネラルが既に含まれているため、硬水を使うと過剰になってしまう恐れもあります。ミルクや離乳食をつくる際も軟水を使うようにしましょう。
いかがでしたでしょうか。最近はドラッグストアなどでヨーロッパ産の硬水のミネラルウォーターを手軽に購入できるので、軟水と飲み比べをしてみるのもおもしろいかもしれません。ちなみに海外で、軟水のミネラルウォーターを見分けるには、赤ちゃんのイラストやマークを探すと良いそうですよ。
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