海に囲まれている日本は、国土の大半を森林が占めており、数々の美しい河川が流れているので水の豊かな国!そんなイメージがりますが、実は大量の水を海外から輸入しているってご存知でしたか?
「食料自給率」とは、その言葉の通り私たちが食べる「食料」を「自給している割合」です。
「自給している割合」とは、「日本全体に供給された食料」に占める「日本で生産した食料」の割合ということになります。「食料」には、米や麦、肉、魚介類、野菜、果物など様々なものがあります。この食料自給率が低いのは、皆さんもご存じかと思います。
農林水産省によればカロリーベースでの日本の食料自給率はわずか39%、つまり61%の食料を輸入に頼っているということになります。しかも、国内の農業就業人口がこの20年で約45%も減少しているだけでなく、農業就業者の平均年齢は66.2歳(平成25年)に。国として様々な策を講じてはいるものの、食料の多くを輸入に頼らざるを得ない状況はまだ長く続くことが想像できます。
バーチャルウォーターとは、食料を輸入している国(消費国) において、「もしその輸入食料を自国で生産するとしたら、どのくらいの水が必要になるか」を推定したものであり、ロンドン大学東洋アフリカ学科名誉教授のアンソニー・アラン氏がはじめて紹介した概念です。
例えば、1kg のトウモロコシを生産するには、1,800 ℓの水が必要です。また、牛はトウモロコシなどの穀物を大量に消費しながら育つため、牛肉1kg を生産するには、その約20,000 倍もの水が必要です。
つまり、日本は海外から食料を輸入することによって、その生産に必要な分だけ自国の水を使わないで済んでいるのです。言い換えれば、食料の輸入は、形を変えて「水を輸入している」ことと考えることができます。
バーチャルウォーターの輸入国を見てみるとその多くは日本のような先進国です。
本来、バーチャルウォーターは水資源の豊富な国が輸出し、水不足になりがちな国が輸入することで、バランスが取れるはずです。しかし、実際には降雨量が少なく水不足になっている国もバーチャルウォーターを輸出しなければ経済が成り立たない状況に陥っており、反対に日本のように年間の降水量が多く、質の高い水道水が広く普及している国も、他国から多くの食料を輸入することでバーチャルウォーターを得ています。
しかし、単に輸入を止めれば良いというわけでもありません。アフリカなど開発途上国の中には農産物を主な輸出品として経済が成り立っている国もあります。また、農業従事者は輸出できなければ生活が成り立たなくなってしまいます。そういった観点からバーチャルウォーターは簡単に解決できる問題ではないのです。
全てを直ちに改善することはできませんが、日本国内のライフスタイルを見直すことはすぐにでもできます。
私たちの食生活を見直し、地産地消や食育などを進め、食品ロスを減らす、そして食料自給率を高めることで、海外の食料に大きく頼る現状を改善することができます。
全く頼らないということは難しく、また他国の貿易による利益を考えれば、完全に輸入しないということはできませんが、それでもバーチャルウォーターの消費を抑えることはできます。私たちに出来ることから取り組んでいきましょう。