近年、私たちの住む地球環境の未来や将来の子供たちのために今できることに目を向けたSDGsなどの「持続可能な取り組み」が非常に注目されています。
そこで、今回は今の生活をよりよい状態にするために、今までは捨てていたものを“アップサイクル”して新たな役目を持たせフードロスの解消につながる可能性を秘めた「アップサイクル食品」についてご紹介します。
フードロスとは、まだ食べることができるのに廃棄されてしまう食べ物のことを言います。食べ残しや売れ残り、賞味期限が近いなどの理由だけでなく、見た目が規格外などのさまざまな理由で廃棄をされます。
日本では年間約612万トン(2017年度推計値)もの食べ物が廃棄されており、日本人1人あたりに換算すると、お茶碗1杯分(約130g)のごはんの量が毎日捨てられている計算になります。
日本におけるフードロスの原因には、スーパーやコンビニなどの事業系のフードロスと、家庭での料理の作りすぎや食べ残し、野菜や果物などの皮の剥き過ぎ、無駄買いなどによる期限切れなどの家庭系フードロスの大きく2つが挙げられます。
また、日本のみならずフードロスは世界的にも大きな社会問題となっており、その一方で、世界中に飢餓で苦しむ人も多くいるという矛盾が生じています。
さらに、フードロスによる世界経済の損失額は年間約101兆円を超えるともいわれています。
様々な理由で廃棄された食品はゴミとして出されます。ゴミの回収やゴミ処理場までの運搬にもエネルギー資源が使用されます。さらには、廃棄されたゴミは基本的に可燃ごみとして処理されますが、水分を含む食品は、運搬や焼却の際に大量の二酸化炭素を排出します。
そして、焼却後の灰の埋め立ても環境負担となるなど色々な問題が絡み合って生じてしまいます。
では、次にサステイナブル(持続可能)な考え方から生まれた、新たな視点であるアップサイクルとはどのようなもので、またフードロスの問題とどのように関わってくるのかご紹介します。
この言葉は、使い捨ての文化から地球や自然環境に対する意識の高まりによって、今ある資源をどのように使っていくかに目を向けたことで生まれた考え方であり、本来は廃棄されるはずであったものに新たな用途や付加価値の高いものに生まれ変わらせ、別のアイテムに進化させるというものです。
この考え方は、ファッションや食品など幅広い分野に応用されており、今までのリユース(再利用)やリサイクル(再循環)とは少し目的が異なります。これまでであれば不要とされていたものや元からある素材の特徴を生かし元の製品よりも「より価値のあるもの」を生み出し、アップグレードすることで廃棄物を少なくして循環型社会を実現していくことが目的です。
食のアップサイクルとは、製造過程で出る副産物や規格外のものなど、本来廃棄されるはずであった食材にひと工夫を加えることによって、まったく新しい食品に生まれ変わらせたものをいいます。
例えば、果物の皮をドライフルーツにしたり、形が理由で規格外となった野菜や果物をソースにしたり、野菜の加工で不要になったものを使用したクレヨンなど天然素材で安全性も考慮した製品などがあります。
また、日本には昔から「もったいない精神」という考え方があり、アップサイクルによって日本伝統のものも新たな価値が見いだされるようになってきています。
次に、日本で実際にどのように使われているのか例を挙げてご紹介します。
米ぬかは、昔から日本ではぬか漬けなどとして使われていますが、古くて新しいスーパーフードとして改めて注目を集めています。
玄米を精米することで出てくる米ぬかですが、一番栄養素が詰まっている部分であり「栄養素の宝庫」といえます。白米部分を取り除いた米ぬかは、エネルギー代謝に関わるビタミンB群や食物繊維、マグネシウム、米ぬか特有のポリフェノールであるγ-オリザノールなどが豊富に含まれます。
米ぬかは水に溶けにくいため、加工をすることで水に溶けやすいサプリメントの様にしたり、ヨーグルトにかける、パンケーキなど粉類に。
米ぬかに含まれるポリフェノールには抗菌作用があるため、高機能でエコなバイオマスポリ袋として。
私たちは便利さや効率の良さから使い捨てできるものやファーストフードなどを気軽に利用しがちです。しかし、その一方で過剰な生産や消費によって生まれてくるフードロスという問題もまた深刻です。
私たちの住む地球のためにできるとして小さなことからアップサイクルし、限りある資源の新たな価値を一緒に生み出していきませんか?