フィトケミカルのチカラ~イオウ化合物~③

フィトケミカルのチカラ~イオウ化合物~③

イオウ化合物とは?

“イオウ(硫黄)”と聞くと「臭い」とイメージされる方が多いかもしれません。イオウ自体はにおうものではなく、水素など他の物質と結びつき『イオウ化合物』となってはじめてにおうようになります。身近なものではニンニクや玉ねぎ、ワサビなどの刺激的な香り成分です。

イオウ化合物の種類と働き

イオウ化合物には強い抗酸化力があるため、食中毒の予防、動脈硬化や生活習慣病の予防などの効果が期待されます。

種類 働き
アリシン(アリイン) ビタミンB1と結合し、疲労回復を促す、抗酸化作用
イソチオシアネート 食欲増進、殺菌作用、抗酸化作用
スルフォラファン 解毒作用、抗酸化作用、ピロリ菌の抑制
アスパラプチン 血圧降下作用

ニンニクや玉ねぎに含まれるイオウ化合物

ニンニクや玉ねぎ、ニラなどの香味野菜に含まれる硫化アリルの一種の、『アリイン』『アリシン』などがあります。アリインは無臭の成分で、刻んだり、すりおろして細胞を傷つけることで、アリイナーゼという酵素と反応して「アリシン」という成分に変化します。これがニンニクや玉ねぎの刺激的なにおいの正体です。

アリインやアリシンいずれも強力な殺菌作用があり、アリシンには、コレステロールの代謝を促し、血管を拡げ、血流を促す作用があります。その他、ビタミンB1の吸収率を高めるため疲労回復を促します。アリシンは、水に溶けやすく熱に弱い揮発性の成分ですが、体内ではビタミンBと結合してアリチアミンとなり、油に溶けやすい性質へと変化します。

アリシンの効果を最大限に求めるのであれば、生のまま食べるのがおすすめです。生で食べる場合、玉ねぎは切った後にバットなどに広げて、15~30分ほど空気に晒すことで辛みを緩和することができます。ニンニクやニラは刺激が強いため摂りすぎには注意が必要です。

たまねぎとにんにく

加熱するとにおいが変化する?

冷たい油に加え低温からゆっくりと温めることで甘みが出て、香ばしい独特の香りに変化します。これは糖質が分解されることによるものと60~80℃で加熱すると最も多く生成される、ニンニクは「スコルジニン」、玉ねぎは「プロピルメルカプタン」という成分によるものといわれています。

これらの香りには、だ液や胃液など、消化液の分泌や血流を促し、胃腸の働きを活発にさせることで食欲を増進させたり、消化吸収を高める効果などがあります。

においを抑えたい場合には、ニンニクの皮をむかずに丸ごとラップで包み、電子レンジで加熱すると酵素の反応が抑えられるため、においが弱めることができます。

電子レンジ

ニンニクや玉ねぎの食べ過ぎでおならが臭う?!

おならが臭くなる原因には、大きく3つ挙げられます。

  • イオウが多く含まれる食べ物の食べ過ぎ
  • 肉類などの動物性タンパク質が多い食べ物の食べ過ぎ
  • 腸内環境の乱れ

おならの成分には、飲み込んだ空気が約7割、血液や腸粘膜を通り出てきたガスが約2割、残りの1割は腸内細菌の働きによって発生したガスが含まれています。

その中でにおいの正体は、悪玉菌の一つであるウェルシュ菌などが食べものを分解する際に発生する硫化水素、アンモニア、インドールやスカトールなどのガスによるものです。

イオウが多い食品は、硫化水素が発生して卵の腐ったようなにおいとなり、動物性タンパク質は体内にアンモニアやインドール、スカトールなどの大便臭を発生させます。これらの成分は少量でも含まれていると強いにおいを発する原因となります。

ワサビや大根、キャベツに含まれるイオウ化合物

ワサビや大根などのツンとした辛みやキャベツの独特の甘い香りは、イオウ化合物の『イソチオシアネート』によるものです。

イソチオシアネートは、アブラナ科の野菜に含まれる辛み成分で、ワサビや大根のような辛味のあるものの他に、キャベツ、ブロッコリー、白菜や小松菜などツンとしないものにも含まれる苦み成分でもあります。強い抗酸化力があり、食欲増進や抗菌作用が期待できます。

イソチオシアネートは加熱に弱いため、生で食べると効果的です。野菜を切ったり刻んだりすることにより、野菜に含まれる前駆体であるグルコラファニンとミロシナーゼという酵素が反応して生成されるため、刻んでから少し待つことで効果を得やすくなります。

わさびと大根とキャベツ

ブロッコリーに含まれるイオウ化合物

アブラナ科のブロッコリーやカリフラワーには、発がん性物質を解毒する効果が高い『スルフォラファン』というイオウ化合物が含まれています。ブロッコリーの芽(ブロッコリースプラウト)に多く含まれる辛み成分で、前述のイソチオシアネートの一種です。スルフォラファンは、食品や空気中などに微量に含まれる有害物質を無毒化し、体外に排出を促す作用があります。

日本人の胃がんの約98%はピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染によるものといわれていますが、スルフォラファンにはピロリ菌の感染予防や、ピロリ菌によって起こる胃粘膜の炎症を抑える効果も期待されています。

イオウ化合物を効率よく摂るための注意点

イオウ化合物は、健康によい影響を与える成分ではありますが、熱に弱い性質があり加熱することで効果が失われることがあります。

例えば、アリシンは加熱によって分解をされるため生で摂取することが最も効果的です。ニンニクは刻んだ後に10分程度置いてから食べると、アリシンが最大限に活性化します。加熱する場合は、できるだけ低温で短時間調理し、過度な加熱を避けることが大切です。

同様に、イソチオシアネートやスルフォラファンは加熱すると酵素の働きが失われる可能性があります。キャベツやブロッコリースプラウトはサラダなどに加えて生で食べ、スムージーやジュースにして飲むのも効果的です。ブロッコリーやカリフラワーなどは1~3分程度で軽く蒸す程度に抑えるようにしましょう。

イオウ化合物は適量を摂取することで健康によい効果をもたらしますが、過剰に摂取すると胃腸に負担をかける可能性や体臭が強くなることがあります。摂りすぎには注意しましょう。

著者アイコン著者紹介

特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
全国各地で様々な対象者の方向けの講演会を行ったり、執筆活動を行うなど精力的に活躍する当協会の健康管理士、管理栄養士が担当しております。
それぞれ得意の分野を活かし、今知りたい「食や健康」をお届け!
毎月の食Doのテーマや、食Do執筆の裏側を公開する「裏食Do!」(アメブロ)Instagramなどもぜひお楽しみに!!
監修:日本成人病予防協会 会長 医学博士 片野 善夫          

       
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