ヨウ素は、体の中に約10g含まれており、主に「甲状腺」に存在しています。ヨードと呼ばれることもあります。ヨウ素は、基礎代謝を促進する甲状腺ホルモンの原料となるため体になくてはならないミネラルです。
甲状腺は首の真ん中、のど仏のすぐ下にあります。重さ15~20g、大きさが4~5cmほどの臓器です。 蝶が羽を広げたような形で、気管に張り付いています。女性の方が男性より大きく、高い位置にあります。体の代謝や成長などを調節する「甲状腺ホルモン」をつくります。
甲状腺ホルモンには、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)があります。これは、脳にある視床下部から分泌される甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の刺激によって下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌され、それによって甲状腺から甲状腺ホルモン(T4・T3)が血中に分泌されます。また。血中に放出された甲状腺ホルモン(T4・T3)の濃度が高くなるとTSHの分泌が抑えられ、甲状腺ホルモン産生は低下します。これをネガティブフィードバックといい、この機能によって血中の甲状腺ホルモン濃度は常に一定に保たれています。
ヨウ素の摂取が不足すると、甲状腺ホルモンの生成が出来なくなります。そのため、下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌が増加し、甲状腺の発達を促進することで、ヨウ素不足を補おうとしますが、この状態が続くと、甲状腺の肥大、甲状腺腫が起こります
ヨウ素を過剰に摂りすぎると甲状腺機能低下症を起こしたり、甲状腺機能亢進症を起こしたりすることが知られています。日本ではヨウ素によって甲状腺機能亢進症が起こることはほとんどありません。ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料なので、たくさん摂るとホルモンが増加するように思われるかもしれませんが、実際には過剰なヨウ素は甲状腺の働きを弱めてしまいます。
「日本人の食事摂取基準」によると、ヨウ素の1日摂取量の推奨量は成人男女で150μgで上限量は3000μgとなっています。ヨウ素を多く含む食品は、昆布、わかめ、海苔、寒天、イワシ、カツオなどです。特に、昆布に多く含まれており、1g(4センチ角)だけで1日の所要量の10倍も摂取できるといわれています。海藻類、魚介類を食べることの多い日本人の場合では不足することは稀です。日本では欠乏症よりも過剰症による甲状線種が多く、健康な人であれば過剰に摂取した分は排泄されますが、まれに海藻類やサプリメントの過剰摂取により、過剰症がみられることがあります。