“最高の睡眠”を手に入れよう!体内リズムと睡眠

“最高の睡眠”を手に入れよう!体内リズムと睡眠

健康意識の高まりとともに、睡眠が健康に与える影響が認知されるようになってきました。ところが、日本は不眠大国と呼ばれるほど世界的に見ても睡眠時間が短いといわれています。
今回は、”最高の睡眠”を手に入れるために気を付けたい生活習慣についてご紹介します。

 

睡眠の役割とは?

人間は一生のうち、約1/3の時間を睡眠に費やすといわれ、主に脳や体に休養を与えるために眠ります。睡眠中は、体内でさまざまなホルモンが分泌され、細胞の新陳代謝を促して、日中の活動で生じた心身の疲労回復や修復、脳内の老廃物の排出などを行っています。また、免疫の増強、脳内で記憶の整理や定着なども行われています。

最高の睡眠

なぜ眠くなる?睡眠のメカニズム

人間の睡眠には、大きく分けて3つのメカニズムがあります。

体内時計の働き

体内時計の働きによって、夜になると眠くなり、朝になると覚醒するしくみです。
人間は地球の自転による24時間周期のリズムに合わせ、体内時計の司令のもと体温や血圧、ホルモン分泌といった体の基本的な機能が変化し、1日の体のリズムが作られています。
例えば、睡眠のリズムにはセロトニンとメラトニンという物質が関係しています。私たちが朝の光を浴びると、神経伝達物質であるセロトニンの分泌が始まり、私たちは活動モードに切り替わります。そして、朝の光を浴びてから14~16時間後、つまり夕方から夜間にかけて、今度は日中作られたセロトニンを材料にして、メラトニンというホルモンの分泌が始まります。メラトニンの分泌量が徐々に増加することで、私たちは眠気を感じ、睡眠に導かれていきます。

睡眠欲求

日中の活動の疲れによって、睡眠圧(睡眠欲求の強さ)が徐々に溜まっていき、眠気が起こるしくみです。
十分な睡眠をとると睡眠圧が解消されて覚醒するというシステムで、毎日この睡眠圧の蓄積と解消が繰り返されます。睡眠圧については、溜まった記憶を整理したり、脳内の老廃物を排出させたりするために高まるのではないかと考えられています。

オレキシンによる覚醒作用

神経伝達物質のオレキシンによって、覚醒と睡眠を調節するしくみです。
覚醒と睡眠はシーソーのような関係で、日中はオレキシンが多く分泌され、脳にある受容体に結合すると、覚醒に傾く力が強くなって覚醒状態になります。一方、夜になって体内時計や睡眠圧の働きによってオレキシンの分泌が抑えられると、今度は睡眠の側に傾く力が強くなって、睡眠状態になります。

眠くてあくびをする女性

 

質のよい睡眠とは?

睡眠には、睡眠時間と睡眠休養感という2つの指標があり、この2つを満たしているのが良い睡眠といえます。

最適な睡眠時間はどのくらい?

睡眠時間は、成人においてはおよそ6~8時間が適正な睡眠時間と考えられています。しかし、適正な睡眠時間には個人差や年齢差が大きく、朝の目覚めのスッキリ感に加えて、日中眠気を感じずに過ごせるかが目安となります。

睡眠休養感とは?

睡眠休養感は、朝目覚めた時によく眠れたと感じること、つまり睡眠で休養がとれているという感覚のことです。睡眠休養感は、睡眠時間の不足だけでなく、睡眠環境やストレス、アルコールやカフェインなど嗜好品の摂り方、その日の体調などさまざまなものから影響を受けることが分かっています。

 

睡眠負債とは?

毎日の睡眠不足が借金のように積み重なっていくことを「睡眠負債」と呼びます。わずかな時間の睡眠不足であっても、それが少しずつ蓄積していくことで、無意識のうちに心身に大きなダメージを与え、仕事や勉強のパフォーマンスが低下したり、病気のリスクが高まったりします。仕事や学校が休みの日に、平日よりも2時間以上遅く起きるという場合には、平日の睡眠時間が不足している可能性が高いといえます。早めに生活リズムの見直しをして、しっかり睡眠時間を確保しましょう。

寝不足な女性

 

睡眠と健康の深い関係

慢性的に睡眠時間が不足したり、質が低下したりすると、日中の眠気や疲労を引き起こすだけでなく、心身にさまざまな影響を及ぼします。

  • 注意力や判断力、記憶力の低下
  • 肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患の発症リスク上昇
  • うつ病など精神疾患の発症リスク、再発リスクの上昇  など
睡眠と成長ホルモンの関係

成長ホルモンは、成長ホルモンは脳の下垂体から分泌されるホルモンです。発育期の子どもにとって脳や体の成長に役立ちますが、大人になっても体の損傷を修復し、疲労回復や血糖の調整、脂質の分解、免疫力の回復、肌の新陳代謝を促すなど、健康維持にとって重要な働きをしています。成長ホルモンは、睡眠が始まった直後の深い睡眠時に多く分泌されることが分かっています。つまり、入眠直後からぐっすりと眠ることが重要です。質のよい睡眠をとって、成長ホルモンを味方につけましょう。

朝気持ちよく起きる

 

睡眠の質を高める3つのポイント

睡眠の質を高めるために意識したい生活習慣のポイントをご紹介します。

  • 朝目覚めたらカーテンを開けましょう

朝の光を浴びることで、体内時計(親時計)がリセットされます。

  • 朝食を食べましょう

朝食を食べることで、胃腸などの消化器官にある体内時計(子時計)がリセットされます。しっかりと噛んで、体を起こしましょう。

  • 寝る2~3時間前にお風呂に入りましょう

寝る約2~3時間前に少しぬるめのお湯(約38~40℃)に浸かるようにしましょう。じわじわと体温を上げて、寝る前にゆっくりとほてりを取ると、寝る頃にはちょうどよく深部体温が下がり、寝つきがよくなります。

入浴する女性

 

睡眠の質を高める栄養素

タンパク質

メラトニンの材料となるセロトニンは、必須アミノ酸の1つであるトリプトファンから作られます。トリプトファンは、体内で生成することができないため、食品中のタンパク質から摂取することが必要です。

卵、豆腐・納豆・味噌などの大豆製品、チーズ・牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、バナナ

ビタミンB群

トリプトファンからセロトニンを合成するためには、ビタミンBが必要となります。その他、ビタミンB12には自律神経を安定させ、睡眠のリズムを整える働きがあります。

ビタミンB6 赤身の魚、ヒレ肉、ささみなど脂質の少ない肉類、バナナ、パプリカ、玄米、サツマイモ
ビタミンB12 肉類、魚介類など動物性食品に多い

グリシン

脳をクールダウンさせ、深部体温を下げる作用のあるアミノ酸です。

えび、かに、うなぎなどの魚介類、大豆製品

マグネシウム

神経の興奮を沈め、筋肉などをリラックスさせる働きがあり、メラトニンの合成にも必要です。

アボカド、バナナ、アーモンドやカシューナッツなどのナッツ類、キヌア、きなこ

 

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著者アイコン著者紹介

特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
全国各地で様々な対象者の方向けの講演会を行ったり、執筆活動を行うなど精力的に活躍する当協会の健康管理士、管理栄養士が担当しております。
それぞれ得意の分野を活かし、今知りたい「食や健康」をお届け!
毎月の食Doのテーマや、食Do執筆の裏側を公開する「裏食Do!」(アメブロ)Instagramなどもぜひお楽しみに!!
監修:日本成人病予防協会 会長 医学博士 片野 善夫          

       
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