現代の日本では国民の3人に1人が何らかのアレルギーを持っているといわれてます。
その中でも特に苦しんでいる人が多く国民病とも言われる花粉症、また近年急増している食物アレルギーについて紹介していきます。
私たちの体には、ウイルスや細菌など異物が入ってきたとき身を守るための「抗体」が作られ抗体には外敵を攻撃する「免疫」という仕組みが備わっています。この免疫が花粉や食べ物などに対しても過剰に反応し攻撃しすぎることでマイナスの症状を起こす状態がアレルギーです。
アレルギーにはⅠ型~Ⅳ型があり、花粉症や食物アレルギーの他にも喘息やアトピー性皮膚炎などはⅠ型の即時型(アナフィラキシー型)に分類され反応時間が早いとされています。
このⅠ型アレルギーの原因となる花粉や食べ物、ダニなどのアレルゲンが体の中に入ることで異物とみなし、免疫機能が働いて「IgE抗体」という抗体が作られます。すると再度アレルゲンが体内に入ったときにアレルゲンはIgE抗体とくっつき体内に蓄積され、細胞からヒスタミンなどが放出されてその結果アレルギー症状を引き起こします。昨年まで花粉症ではなかったのに花粉症になったという人はこの仕組みにより蓄積されていたものが一定量に達しヒスタミンなどが放出されたからだと考えられます。
50年前にはほとんどみられなかったアレルギーですが、近年急増している背景には環境の変化が考えられています。例えば、戦後のスギの大規模植林や住宅の西洋化によるダニの繁殖、食生活では和食離れによるインスタント食品やスナック菓子の摂取頻度増加、自律神経を乱す睡眠不足、抗生物質の使用も腸内細菌を崩すことになり繋がります。
腸管は消化吸収だけでなく免疫器官としても重要な働きを担っています。腸内の善玉菌を増やし働きが活発になれば腸内環境が良くなり栄養が効率よく取り込まれ排泄もスムーズになります。
そうすると体調が維持され心身共に安定します。ストレスも悪玉菌を増やすため腸内環境を整え良い体調を作ることが花粉症改善の体質を作っていくのです。特定の食べ物で即日花粉症が改善されるということはありませんが、悪玉菌を増やす食べ物は避け栄養バランスのとれた食生活を送らないことには花粉症は改善されないでしょう。
プレバイオティクスは、難消化性オリゴ糖や、食物繊維のように、腸内にいる善玉菌にエサを与え、乳酸菌・ビフィズス菌増殖促進、整腸作用、ミネラル吸収促進などの働きがあります。
<代表的な食品>
海藻、きのこ、玄米、胚芽米、雑穀米、バナナ、ごぼう、キャベツ、きな粉、蜂蜜
食物繊維やオリゴ糖を取ると腸内細菌は近年注目されている「短鎖脂肪酸」を作り出します。
短鎖脂肪酸には酪酸、酢酸、プロピオン酸などがあり抗アレルギー作用、抗炎症作用があり、なお花粉症の症状を抑えるための摂取が推奨できます。
ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌のように、善玉菌を含み腸内フローラのバランスを改善して、体に有益な働きをする生きた微生物(善玉菌)、もしくはそれを含んだ食品のことです。
下痢や便秘を抑える、腸内環境を改善する、免疫力を回復させる、腸内の感染を予防する等の働きがあります。
<代表的な食品>
ヨーグルト、納豆、キムチ、チーズ
この両方の食品を摂ることで腸内環境を改善して花粉症と戦う強いからだを目指しましょう。
また、DHA、EPAは抗アレルギー作用があるので青魚は花粉症の時期にもおすすめできます。えごま油や亜麻仁油も良いですが魚油を取ることがおすすめです。
悪玉菌を増やしたり、ヒスタミンを生成する高脂肪な食べ物や、アルコールを分解するときに生成されるアセドアルデヒドがアレルギーを悪化させるためアルコールの取りすぎは花粉症の時期は控えましょう。
食物アレルギーとは特定の食品を飲食することによって、異物となる食品のタンパク質が体内に取り込まれアレルギー症状が起こる免疫反応を言います。食品が完全に消化されていないまま吸収されると異物とみなされることが多いため消化器官が未発達な乳幼児で起こりやすくなっています。
アレルギーとなり得る食品は年齢による特徴があり乳幼児(2歳未満)では鶏卵と牛乳が半数を占め、次いで小麦、そば、甲殻類などがあげられます。鶏卵は19歳まで1番多い原因食物です。加齢とともに80~90%はこれらの耐性を獲得していくといわれています。18歳以上では小麦、甲殻類、果物類の順で頻度が高くなっています。
皮膚症状、粘膜症状(眼症状、鼻症状、口腔咽頭症状)、呼吸器症状、消化器症状(腹痛、悪心)などを引き起こし最も多い症状は皮膚症状です。強い症状ではアナフィラキシーショック(頻脈、虚脱状態、意識障害、血圧低下)をきたすこともあります。
ある特定の食物(小麦や甲殻類で多い)を食べて数時間以内に運動したとき、蕁麻疹などの軽症からショック症状に陥る場合があります。運動量の多くなる小学校高学年でみられることも多く、学校で発症することが少なくない症状です。
また、アルコール摂取や入浴でも発症リスクが増加します。原因食物を取らなければ運動は可能です。
口腔粘膜に限定した違和感が主徴であり、花粉症の人に起こる症状です。花粉を感作後、生の果物や野菜など極めて似た特徴を持つ食物で生じる食物アレルギーです。食物摂取直後から生じます。
花粉と似た特徴をもつ食物とはシラカンバではりんご、キウイ、マンゴーなど、スギやひのきではトマト、ブタクサではスイカ、メロン、ズッキーニなど、ヨモギではメロン、りんご、セロリなどが挙げられます。
他にもラテックスフルーツ症候群としてラテックス(ゴム風船やゴム手袋)と果物との反応で起こりアボカド、バナナ、キウイフルーツでリスクが高くなります。
原因を知ることで他の食物アレルギーを起こす食品にも注意することができます。
アレルギー症状の度合いによってアレルゲンを含む加工食品のすべてを除去する必要があります。加工品のつなぎとして使われる食品にも注意が必要です。また、牛乳がアレルゲンになる人は牛肉もアレルゲンになる可能性があったり、同様に卵がアレルゲンになる人は鶏肉もアレルゲンになる可能性があるため配慮が必要です。
腸管の免疫系には、食物などに含まれる大量のタンパク質によって引き起こされる過敏なアレルギー反応を防ぐ「経口免疫寛容」がありこのシステムがうまくいってないと食物アレルギーを発症することがあります。食物アレルギーの発症予防のために離乳食の開始時期を遅らせたり、予防的に食品を除去することで、この経口免疫寛容のシステムを失うことになります。自己判断での食事制限はしないようにしましょう。
また、食べられる食品であっても頻繁に摂取しすぎるとその食品に対しての抗体ができてアレルギー反応を起こしてしまうことがあります。同じものを繰り返し食べることは避けましょう。毎日食べているものがある場合は日々メーカーを変えるだけでも予防になるので気を付けてみましょう。
食物アレルギーの原因となるタンパク質は加熱すると変性してアレルギーを起こしにくくなるので果物でも初めて食べるときはシロップで煮るなどするとアレルギー発症のリスクが軽減します。
大人になってからそれまで食べていた食品で突然アレルギー症状を起こすことが増えています。
普段の食生活で注意できるところを意識し、気になる症状がある場合は受診し医師の判断に従いましょう。