通常私達が「鍋物」と呼ぶのは、卓上で鍋を火にかけ、調理しながら食べる料理のことです。鍋料理はいかにも古くからあった伝統料理のようですが、実は鍋物が料理として確立されてから、わずか200年余りしか経っていません。
鍋料理は、タンパク質、ビタミン、食物繊維などをバランス良く含んでおり、下準備や調理に時間がかからず簡単に作れます。また材料の種類が多く、油をほとんど使わないため、低カロリーでヘルシーなメニューです。全国各地にさまざまな特産鍋がありますが、今回はその中のいくつかを取り上げご紹介します。
北海道の特産品の鮭をたっぷり入れて、味噌で味付けをした北海道の郷土料理です。名前の由来は、鮭が多くとれる石狩川にちなんでいます。
鮭の身の赤い色は「アスタキサンチン」という色素で、抗酸化作用が非常に高く、ビタミンEの数百倍、β-カロテンの数十倍ともいわれています。
本場の石狩では、白菜の代わりにキャベツを使います。
米どころ秋田ならではの、収穫の喜びを分かち合う郷土料理です。県北地方のキコリやマタギ達が残した飯をつぶし、棒に刺して焼いて食べていたものを、ヤマドリなどと一緒に煮込んだのが始まりとされています。きりたんぽは包丁で切るのではなく、ちぎった方が味がしみて美味しいです。きりたんぽ鍋に欠かすことのできない「比内地鶏」は、名古屋コーチン、薩摩地鶏とあわせて『日本三大美味鶏』の1つです。
秋田県内では、冬場に学校給食のメニューとなる学校もあります。
あんこうは見かけによらず上品で淡白な味わいがあり、「西のふぐ、東のあんこう」と称される高級魚です。あんこうの肝を炒ってだしで溶き、味噌で味付けをして、そこにあんこう、野菜、焼き豆腐などを入れて煮込んだものがあんこう鍋です。
あんこうの皮にはビタミンB2やコラーゲンが豊富に含まれており、肝にはビタミンA・D・Eや、亜鉛・銅などのミネラルが豊富です。
あんこうは良く煮た方が骨離れがよく、コクが出で美味しくなります。
どじょうを使った江戸生まれの鍋料理です。開いたどじょうと笹がきにしたごぼうをしょうゆ味で煮込んで卵でとじた料理です。どじょうは体を温め、生気を増す働きがあるといわれています。ビタミンB2、ビタミンD、カルシウム、鉄分などが豊富で、うなぎと比較して、丸ごと食べる分栄養価は高いといえます。スタミナ源にはもってこいの料理です。
「柳川鍋」という名前は、福岡県柳川市に由来するという説もあります。
かぼちゃ、里芋、大根、にんじんなどの季節の野菜を入れた味噌仕立ての汁の中に、強力粉で打った幅広の生麺を入れ、ゆっくりと煮込んだ山梨県の名物です。
ほうとうは、家庭ごとにいろいろな具を入れ、それぞれの家の味となっていく郷土料理の1つです。従って、これが「ほうとう」というものは実際のところありません。
農林水産省が各地に伝わるふるさとの味の中から決める、「農山漁村の郷土料理百選」の中の1つに選ばれました。
水炊きは、別名「博多煮」とも呼ばれています。もともとは中国から長崎を経て博多に伝わったといわれています。皮や骨付き鶏肉のぶつ切りを用い、鶏肉や骨から出る旨味を生かすために、他の調味料を使わずに水から煮立たせるのが本来の調理法のため「水炊き」と呼ばれます。たれには、ぽん酢しょうゆの他、ごまだれなども用いられます。
料理法は似ていますが、博多とその他の地域で差異がかなりある料理です。
ふぐ鍋は、魚の切り身の鍋を指す「ちり」をつけて「ふぐちり」とも呼ばれます。関西では「てっちり」とも呼ばれます。ふぐちりは、昆布などで取っただし汁に、ふぐの切り身や骨を野菜などと一緒に土鍋に入れて煮込みます。つけだれとして、ふぐ刺しと同様にポン酢を用いるのが一般的です。
本場下関では福とかける意味合いを込めて、ふぐを「ふく」と呼んでいます。