肥満の原因の1つに、「油の取りすぎ」があります。料理から摂取した油は、小腸で吸収・再合成され、中性脂肪となって血液中に出ていきます。そしてエネルギー源として利用されます。しかし必要以上に油を取りすぎると、余分な中性脂肪が体内に蓄積され、これが体脂肪の増加へとつながります。油の取りすぎが肥満を招く、というのはこういう理由です。
近頃、スーパーの店頭やテレビコマーシャルで「体に脂肪がつきにくい」という機能性をうたった食用油を目にするようになりました。体に必要な栄養素を補給し、料理の風味を良くする油にさらなる一面が加わって注目が高まっています。一体どういったものなのでしょうか?
体に脂肪がつきにくい油は、「ジアシルグリセロール」が主成分となっている油のことをいいます。この「ジアシルグリセロール」を80%以上含んだ食用油が、特定保健用食品の「体に脂肪がつきにくい」製品として認定されています。
一般の食用油の原料は、生きていくためのエネルギーである脂肪酸3つがグリセリンで結びつけられた「トリアシルグリセロール」が主成分です。しかし、ほとんどの食用油にもわずかながらジアシルグリセロールが含まれており、その構造はトリアシルグリセロールから脂肪酸を1つ取った形をしています。
トリアシルグリセロールは、十二指腸でバラバラに分解された後、小腸で吸収されます。吸収後はもとのトリアシルグリセロールに再合成され、血中中性脂肪として全身に行きわたります。その後、エネルギーとして利用されなかった中性脂肪は体脂肪として蓄積されます。
一方、ジアシルグリセロールは十二指腸で分解され、小腸で吸収される過程はトリアシルグリセロールと同じですが、分解された後の形が異なるため、吸収後トリアシルグリセロールに再合成されにくく、食後の血中中性脂肪が上昇しにくいのです。
また最近の研究で、ジアシルグリセロールは、トリアシルグリセロールに比べて脂肪を燃やしやすくする働きがあることも分かってきました。体に脂肪がつきにくい効果は、このような働きによるものなのです。そしてこの効果は、特に肥満気味の方に発揮されます。
また、「中鎖脂肪酸」を主としてつくられた食用油も「体脂肪がつきにくい」という効果を認められ、特定保健用食品の認可を受けています。
中鎖脂肪酸は、ヤシ油や母乳にも含まれている、体に安心な天然成分です。普通の食用油に含まれるのは長鎖脂肪酸で、胃では消化されずにそのまま通過し、十二指腸に入ってから分解され、腸管壁で吸収されます。その後、リンパ管経由で血管に入り血流にのって体の各組織をめぐる間に、筋肉や肝臓に運ばれて必要に応じてエネルギーとして利用されたり、体脂肪として蓄積されるという経路をたどります。
これに比べて、中鎖脂肪酸は約半分の長さの分子構造をしています。胃で消化されて、速やかに腸管壁に吸収され、門脈を経て、肝臓に直接運ばれていきます。そして肝臓で効率良く燃やされてエネルギーとなります。中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸より約4倍も吸収が速く、代謝も約10倍速いので、体脂肪になりにくいわけです。
さらに、中鎖脂肪酸が肝臓で燃える時に、中鎖脂肪酸以外の脂肪も燃えやすくなると考えられています。自分自身は燃えてしまって蓄積されないうえに、他の脂肪まで燃やしてくれるので、中鎖脂肪酸は肥満防止や動脈硬化の予防につながるといえます。中鎖脂肪酸を含む油は、現代人の健康を守ってくれるのです。
これらは、従来の食用油に比べて値段が高めのものがほとんどです。しかし、肥満や高血圧症など生活習慣病が気になる人々から、その予防につながるとして需要が高まっています。
ただエネルギーが減るわけではないので、健康に良いからといって大量に摂取してしまっては意味がありません。各商品のパッケージには、特定保健用食品であればその機能とともに、仕組みについても詳しく書かれていることが多く、購入の際の参考になります。それらをよく読み、今まで使っていた油と代えて、賢く使用するよう心掛けましょう。